ねこねこふわふわな住職

真宗大谷派玄照寺 瓜生崇のブログです

統一教会との思い出

私は長年カルト問題に携わっているけど、統一教会(世界平和統一家庭連合)との関わりはそんなになかった。ただ一度、彼らといろいろと話をしたことはある。

2011年のことだから、もう11年前のことになる。私は千葉大学公開講座でかると問題について講義をした。北海道大学の櫻井義秀先生と合同の講義で、前半は私、後半は櫻井先生だった。

私が話をしているときに、一番前の方で携帯をチラチラ見ながら話を聞いている学生がいた。大人しそうな女性だったのだが、講義が終わるとこの学生が怒涛の如く質問をしてきた。詳細は忘れてしまったが、私が講義中に統一教会に触れたことに抗議し、私を批判する内容だったと思う。

ただ、不思議なことに彼女は、質問するときにいちいち携帯をチラ見するのだ。質問の内容もなんだか変で、誰かに言わされている感がある。そこで、自分の話が終わり、櫻井先生の話になったときに、教室をグルっと回って怪しい人物がいないか確認してみた。

すると、いた。一番うしろの席で、中年男性がエアエッジのついたパソコンで、講義の内容のツッコミどころを探して、件の学生の携帯に質問内容を指示して質問させているのだった。早速隣りに座って「何してるんすか?」と問い詰めたら簡単に白状した。彼は統一教会の職員で、学生は信者だった。

「聞きたいことがあるなら、あなたが直接手を上げて質問したらいいじゃん。なんでこんなことするの?」というと、いろいろと言い訳を言ったような気がするけど覚えていない。真面目そうな人だった。

その後、大阪大学原理研究会から連絡があった。千葉大学で行った講演について話し合いたいから寺に行ってもいいか、という。なんで千葉大で話した内容が阪大に伝わっているのかと思ったが、断る理由もないので承諾した。数日してワゴン車に乗って学生が6人寺に来た。

うち1人が大学で勧誘された信者で、5人は祝福二世だという。リーダーは4回生の女性で就職も決まっているという。ずいぶんしっかりした話しぶりで、統一教会はカルトではなく危険な宗教ではないと説明する。私はその内容に一つ一つ反論しながら彼らと対話したが、どちらも感情的になることはなく、宗教以外の内容、学生生活や趣味などの話になればそれなりに楽しく談笑し、2時間ほど対話して彼らは帰った。

後日阪大の先生にそのことを報告した。その6人の信者については大学側でも把握していて、授業にはきちんと出席しているし成績も問題ないという。

私は彼らの背景にどんな宗教被害があるのか、今も考える。自分が見たものは問題なかったと言っているのではない。宗教に入る人にはそれぞれの人生があり、その中には普通の生活や笑いや喜びや悲しみもある。山下容疑者に関連する報道で出てくる二世被害だけが統一教会の姿ではないし、あの学生たちの礼儀正しい姿だけが統一教会の姿でもない。

あらゆる偏見から少しずつ離れ、対話し、そこから生じる社会的問題性を徐々に減らしていくことはできるのだろうか。統一教会に関しては、もうそんな段階の教団ではないことは重々承知しているのだが。